遺産分割調停でよく問題なるのが、「使途不明金」の問題です。
「使途不明金」の問題とは、
①相続人Bは、相続人Aの生存中、Aの預金を管理していた。相続時の預金残高が異常に少ない。BがAの預金を使い込んだに違いない。
②被相続人Aの死亡後、相続人Bが勝手に預金を引き出してしまった。
という2つのケースが考えられます。
法律的には、被相続人の預貯金が無断で払い戻され特定の相続人が取得した場合は、不法行為又は不当利得の問題であり、①不法行為に基づく損害賠償請求訴訟か、あるいは②不当利得返還請求訴訟を提起すべきであって、遺産分割調停で解決すべき問題ではありません。
ただ、実際の調停では、数回程度であれば、「使途不明金」問題に付き合ってくれることが多いようです。
この点、「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」(片岡武/管野眞一編著)では 「調停において使途不明金の主張がされた場合には、まず、当事者の言い分を聴取して、預貯金を管理する相続人に対し、預貯金払戻しの経緯とその使途をできるだけ速やかに開示し、提出すべき資料を提出するように促す。そして、任意に開示しないときは、弁護士会照会により金融機関に入出金状況を明らかにしてもらうことになる。 しかし、この問題に相当回数の期日を費やしても、合意が得られそうもない場合には、別途訴訟による解決に委ね、調停では、現存する遺産のみを対象として先に進めるのが相当である」(同書60頁)としています。